合宿1日目 2013年8月17日(土)
人気アニメ「けいおん!」に登場する学校のモデルといわれている滋賀県・旧豊郷小学校の講堂をステージに使用する音楽イベント「聖地巡礼!!」が昨年に続き今年も開催、しかも今回は「夏休み合宿編」と称して2日間に渡ってのステージ! 会場には多くの音楽ファン、「けいおん!」ファンが集まった。今回は初日の内容をレポート!

アニメや漫画好きの人たちが作品に登場する、各地方に実際に存在する場所へ向かうことを意味する”聖地巡礼”。本イベントは「けいおん!」好きのアーティストたちを中心に、音楽ファンだけでなく、「けいおん!」ファンもみんなごっちゃになって楽しむイベント。ステージを楽しむだけでなく、開演前やステージの間の時間を使って登場キャラに扮したコスプレ姿の観客が講堂や校舎の中で遊ぶ観客の姿も見られ、学生時代に戻った気分に。出演者の楽屋は教室を使い、ステージの講堂も照明や音響はあるものの木製の長いすが並んだ会場は文化祭のような雰囲気がある。ステージ横には校歌と創設者らしき顔写真も並んでいるのが小学校らしさそのまんまでなんとも微笑ましい。しかも観客はみな靴を脱いで講堂へ入るため、スリッパや上履きでライブを楽しむ姿は他では見られない光景だ。
「起立―――!!」の声でステージ1限目(本イベントは各ステージを時間割で表現)がスタート。昨年に引き続き、ボーカル・DJサオリリスを筆頭に結成された本イベントだけのスペシャルバンド”今年はサオビシュヌオーケストラ”が登場し、1曲目「Cagayake! GIRLS」(アニメ・オープニングテーマ)から大きなハンズクラップが起きる。イベントの主謀者でもある、ベースの原昌和(the band apart)はステージで終始満面の笑顔。ギターのKENZI MASUBUCHI(FRONTIER BACKYARD)、木暮栄一(the band apart)のドラムも同様で、一度しか音合わせをしていないというのに息がぴったり過ぎて作品やイベントへの愛を存分に感じる。「ふわふわ時間」や「Don’t say’ lazy’」などアニメのテーマ曲のカバーなど全4曲、昨年以上にバンドの成長を見せてくれた。たとえコピーであっても、プロのバンドマンたちが出演するステージ、それでもなんとも言えぬ”文化祭”の匂いがするのがたまらなく楽しい。なにより、ステージに立つアーティスト自身が普段と違うステージを楽しんでいるのが伝わってくる。
2限目、オープニングアクトのTequelo Caliquelo(テキョロカリキョロ)が登場。なんとも呼びにくいバンド名とは反対に楽曲は爽快でゴキゲンなナンバーばかり。「(僕らを)オープニングアクトに選んでいい仕事したな!」なんてビッグマウスも飛び出しつつも、ひたすらに観客を盛り上げよう、自分たちの姿を焼きつけようと必死にくらいつくステージは気持ちが良かった。

続く3限目、フーイナムは「ここでしかないものを楽しんで!」と、とことんポップに底抜けに明るい直球サウンドで観客を躍らせた。スピーカーに乗り上げ、アイドルばりの振り付け指導をして一緒に踊る。初見の観客がほとんどの中それを逆手に取り、とにかくがむしゃらに楽しむバンドの姿につられ、気がつくと多くのオーディエンスが拳を挙げてステップを踏んでいた。4曲という短い時間の中、バンドのイメージを色濃く残し次のステージへとバトンを繋げた。

ステージの転換中、休み時間でもあるこの時間に観客は思い思いに時間を過ごしていた。飲食ブースで食事をしたり、芝生で寝転んでみたり。校舎の中にある「けいおん!」の部室ではコスプレ姿で撮影大会も。木造の校舎は教室や廊下にいるだけでも雰囲気が楽しめる(陽が落ちた後の廊下はちょっと怖かった…)。音楽イベントやフェスとは違った、ここでしか体験できないものばかりで、ちっとも飽きることがなかった。
4限目のUNCHAINはリハからすでに会場が盛り上がっていた。「Eat The Moon」から始まったステージ、ジャジーな楽曲の中に刻んでいくリズムがなんとも言えぬ心地よさだ。「Show Me Your Height」、会場の空気をぴしゃりと締めるクールなサウンドで観客を引き寄せ、4曲目の椎名林檎の「丸の内サディスティック」をカバーしバンドのアレンジ力で魅せてくれた。全6曲の中でバンドのカラーを存分に味わわせてくれた。

先ほどまでのステージとは一転、妖艶でメロディアスなメタルで魅せたのが5限目に登場したAldiousだ。スジ盛ヘアーにアゲ嬢のド派手なルックスの女性5人組は「けいおん!」のメタル版?を思わせる雰囲気だ。「グラウンド エンジェル」や「ウィッシュ・ソング」と、金髪や盛り髪を振り乱して思いっきりヘッドバンギングをぶちかまし、霧吹きまで見せる! もちろん、サウンドも男顔負けの豪快で屈強な音を響かせた。MCでは「けいおん!」の熱烈なファンだというメンバーが出番前から会場ではしゃぎまわっていたと、意外な一面に思わず会場も沸いた。
6限目には思わぬサプライズステージが。体調不良により出演キャンセルとなったHAPPY BIRTHDAYの代わりに、急遽弾き語りでのステージが披露されたのだ。荒井岳史(the band apart)、TGMX(FRONTIER BACKYARD)、谷川正憲(UNCHAIN)がそれぞれセルフカバーやソロ曲で登場。アコギ1本で広がる歌声はなんとも優しく、暑い空気をまとう講堂に涼やかな空気を届けてくれた。

イベントも後半、DJサオリリスが本業のDJで会場を盛り上げた。壇上のDJテーブルに乗り上げ、コスプレ姿でペンライトを持ちオタ芸しながらアニソン中心に次々に繋いでいく楽曲陣に大盛り上がり。あまりの転換の早さにDJとは思えぬ凄まじい運動量を見せる彼女。それに応えようと、”ヘドバン”に”咲き””逆ダイ”とオーディエンスも思い思いに楽しんでいた(ステージ脇でバンアパ・原もノリノリ!!)。
講堂には夕陽が差し込み、放課後のような8限目に登場したのはthe band apart。「夜の向こうへ」で始まったステージ、軽やかなビートに優しくふわりとしたソウルフルな歌声に聴き入る観客たち。「higher」では一気に落とし込む音の塊にゾクっとするし、続く「12月の」への流れはいつ聞いてもたまらなく気持ちがいい。MCでは原が「2daysも開催するなんて信じられん、調子乗んなよ~」と突っ込みながらも、ひたすらに本イベントへ、そして「けいおん!」愛を語った。「ノード」や「free fall」と緩急極めた抜群のバランスで次々に楽曲を打ち込んでいき、「coral reef」では降りしきるリズム、美しいのになぎ倒すような力強さを持つメロディーにオーディエンスは圧倒された。ラスト「Eric.W」まで全7曲、最高の空気を作り出し次のステージへ繋いでいった。
9限目最後のステージ、FRONTIER BACKYARDは文化祭の締めにぴったりな勢いを見せてくれた。1曲目、「POP OF D.」で会場はクラブへと一転。弾ける音に次々にステージ前方へと駆け込んでいくオーディエンスたち。新曲「picture of the sun」、夏らしいポップなメロとリズムで思う存分に踊りまくると思えば、「tdc」では夕暮れに馴染むミディアムテンポのリズムが体を揺らす。「I can’t let you make her」、怒涛の音郡攻めに観客のテンションはさらに上がり、続く「hope」では観客をステージに上げ一緒になって踊りだす。もうメンバーがどこにいるかわからないほどにステージはハチャメチャ状態! それでもパーティー は終わらない♪ 惜しみなく披露されるハッピーな曲陣に煽られ、気付くとステージが終わったはずのDJサオリリスも観客に混じって踊りだしている。あっという間に本編が終わり、パーティーはアンコールでも続く。開放感たっぷりの「Putting On BGM’s」、「Parties and our music」と攻め続け、楽しい時間を思いっきり食べつくし、踊りつくして1日目のステージがすべて終わった。
合宿2日目 2013年8月18日(日)
もしかすると昨日よりもより一層ごちゃまぜの感がある2日目。色とりどりのバンドの出演に、そして流れるDJサウンドに身体を揺らし思い思いにノリながら期待に胸を膨らませるオーディエンスたち…。静かに幕が上がると同時に、さぁ2日目の授業のはじまりです!

本日の1限目は関西出身の4人組ロックバンド、フレデリック。人を惹きつける雰囲気をまといつつもどこか人をくったようなユーモアをも醸し出すボーカル、記憶に残る印象的な歌詞、そして音の隙間を活かした繊細かつ力強さを感じるバンド・アンサンブル。これからの新鋭とは思えないほど、なんとも魅惑的でクオリティの高いステージを披露した彼ら。観客の心を瞬く間にグっと掴んで、一気に会場の熱気を上昇させ、存在感を印象付けてくれた。

「昨日大事なことを言い忘れてたんですけど、バンド名が“今年はサオビシュヌオーケストラ”と言います!」(vo・サオリリス)と2限目に登場は、このイベントの目玉でもあるサオリリス+原昌和(b・the band apart)+KENJI MASUBUCHI(g・FRONTIER BACKYARD)+木暮栄一(ds・the band apart)のスペシャルバンド! 初日に続き、オーディエンスならずともアーティストのみなさんの楽しそうなこと(笑)。「原さん、ずっと放課後ティータイム(の絵)をアンプのところに飾ってたんですね(笑)」とサオリリスが語るほど愛情溢れるステージは、コール&レスポンス、ふりつけももちろんバッチリ。ライブで聴くとこんなにロックな楽曲なのかとあらためて実感させられる「ふわふわ時間」「U&I」など全3曲を披露してくれた。
手拍子で迎えられながら、3限目のライブアクトWiennersがステージに。どこか懐かしくフォーキーな優しさを漂わせながらも、ダンサブルかつ疾走感あるサウンド、キャッチーなメロディにオーディエンスもノリノリだ♪ インパクト大の存在感を放つ玉屋2060%(vo&g)とホワンとした柔らかい雰囲気とキュートな歌声のMAX(vo&key&sampler)というツインボーカルの絡み合いも彼らの大きな魅力で、放たれるグルーヴ感がとても気持ちいい。変則的でありながらも一貫したポップネス・サウンド、はっちゃけたステージングで圧倒的な勢いを放ち次なるステージにバトンをつないだ。

「学校の朝礼みたいだね(笑)」「楽しかった修学旅行~♪」とサウンドチェックの時からオーディエンスと和気あいあいとした雰囲気をつくりだしていたのは、4限目のFUNKIST。6名の大所帯グループだけに、ステージ上もいっぱいいっぱい。観客を巻き込み楽しませるパフォーマンスに1曲目の『スノーフェアリー』から会場は一体化。高く掲げた手を左右にふり、タオルを振り回し、彼らの「飛べ~!」コールにみんな一斉にジャンプ! 彼らが肩を組めば、オーディエンスも肩を組む。一挙手一投足に釘付けになる。いついかなる場所でも常夏な気分にさせてくれる、エネルギーが充満している熱いライブだった。
時間割もどんどん進み、普通の授業なら疲れもでるだろうが…。もちろん、この日のオーディエンスにはそんな様子は微塵もなし(笑)。次なる5限目のアクトを観るために休み時間にも関わらず、前へ前へとつめかけていく。そんなオーディエンスの大歓声と拍手に迎えられたのは昨年に引き続き登場の人気急上昇中のバンド、パスピエ。土台のしっかりとしたバンドサウンドと紅一点・ボーカル大胡田なつきの艶っぽく伸びやかな歌声が会場に響き渡るほど、観客のボルテージもアガるアガる↑。大衆性を兼ね備えた高揚感満点のポップソングとこれまた完璧なオーディエンスのレスポンスの応酬は、いやはやさすが。

6限目はDJサオリリスが登場。「戸惑いを捨てて、楽しんでいけたらと思います!」と元気いっぱい、初っ端から観客たちをグイグイ引っ張っていく。ペンライトを持ち、自らオタ芸を全力で披露すると、最初は好奇心いっぱいの顔で観ているだけだったオーディエンスも一緒になってノリノリに♪ テンションを上げ上げにさせるステージングは、これぞまさにプロフェッショナル!
赤い旗をふりながら待ち構える観客たちの前に、男性陣は学ラン、そしてボーカル・浜崎容子はセーラー服姿で登場! 似合いますね~。続きましての7限目は“トラウマテクノポップ”バンドこと、アーバンギャルドがステージに。シャンソン歌手としてステージに立っていたという浜崎のカリスマ性はとにかくすごい。ロック、歌謡曲、オルタナ、テクノポップ…などなど様々なジャンルの音楽が昇華されたサウンドは確かに彼らならでは、唯一無二のオリジナル。一種のショーを観ているような感覚に陥りながらも、その独特な雰囲気、楽曲群に刺激を受けるエンタテインメントなステージだった。

続く8限目に登場は、昨日トリを務めたFRONTIER BACKYARD。爽やかなダンスサウンドに疾走感のあるビート、厚みのあるグルーヴ。ステージ上ではメンバー各々が存分に動き回り、まだまだ暴れたりないキッズとの応酬がはじまる。観客をステージ上にあげたり、ボーカル・TGMXにいたってはフロアの真ん中で歌ったり、さらには2F席までにも上がり大熱唱! この行動にはオーディエンスもだまってなんていられない(笑)。大歓声でレスポンスしながら、終いにはみんなが手をつなぎ掲げボーカルを通す花道をとばかりにトンネルをつくるなんてなんともHAPPYでなごやかな場面も。学園祭のような雰囲気が充満する会場だからこそ生み出せたパフォーマンス。彼らの手腕のなせるワザがキラリと光り、これ以上ないと言える、その場にいる全ての人が一致団結し和気あいあいとした多幸感に溢れる時間だった。あっぱれです!
そして「放課後ティータイムに負けないライブをしたいと思います(笑)」(原)と、この日のトリに登場は、the band apart。まだこんなに人がいたのか、とびっくりするほどの人数が後ろからワンサカワンサカ集る集る。そんな期待とこのイベントの終幕を惜しむオーディエンスの気持ちに応えるように、『Eric.W』『higher』『photograph』…etcと、静と動、強と柔の緩急の効いたメロディ、サウンドを立て続けに披露。心地よく身体に沁み込んでゆき、自然と身体が動く。さすがバンアパ、身体の中から沸きあがる高揚感を煽りつつも、この日一日、はしゃぎすぎて少々疲れたかもしれないオーディエンスの身体も心も優しく癒してゆくような繊細かつ芳醇なライブで魅せてくれた。ボーカル・荒井が「俺は“けいおん!!”は3話ぐらいしか見ていないから…。でもこれから見てみようかなとあらためて思えるぐらい素晴らしいイベントでした!」と語れば、“けいおん!!”大ファンのベースの原は「今まではシニカル気取って歳をとってきた。でももしバンドしてなかったら前でキャイキャイ言ってたのに~(笑)」と楽しかった2日間を振り返っての感想も吐露。

本編が終わり、それでもまだまだ楽しみたい、この場にいたいオーディエンスたちの“アンコール”コールがいつからか“放課後”コールに(笑)。バンアパメンバーもこのコールにはびっくりしながらも「みんな、補習の準備はいいですかー?」(荒井)と『星に願いを』を。最後までノリノリのメンバーのステージングに終始盛り上がりっぱなしのオーディエンス。

最後の最後は木暮と原による“ワンツー・ワンツースリーフォー”で一本締め。振り返れば、2日間という長い時間も笑顔と熱気だけが余韻として残る素晴らしい内容だった。そして今後も続けてほしいそう心の底から思える充実したイベントだった。