音楽とヒトが繋ぐ、6年3ヵ月ぶりのまばゆい魔法の時間

いろんなエンタテインメントのなかでも、とりわけその日その場だけの要素が強いもの、それは他ならぬライブだろう。万華鏡のように入れ替わり立ち替わり、コラボレートもあり。2010年に行われた『星屑の隙間に木村基博』のステージに触れたとき、一期一会とはまさにこの瞬間だ!と強く感じたことは今でも鮮明に思い出せる記憶だ。それぞれが違った色合いの個を持ちながらも少しずつ共通項のあるスターダスト☆レビュー、KAN、スキマスイッチ、秦 基博。彼らのエヴァーグリーンな歌唱は、互いの新しい魅力を引き出し合い、私たち客席の深淵な部分にも美しい色を重ねていく…素晴らしく忘れられない音楽体験だった。そんな“ホスキモ”(イベントの頭文字を取って)が6年3ヵ月ぶりに、カムバック! いまだに醒めることのない、一夜の魔法。そのパワーに酔わされながら、あのまばゆい時間を振り返ってみよう。

メインステージの左右からスタンド席へと伸びる細長い道と、中央からは小さな“デベソステージ”へと続く道があり、計3本の花道でT字型を成す今宵の舞台。その周囲を360°囲む満員のオーディエンスからは、今か今かと始まりの時への期待が迫ってくる。と思えば暗転、壮大なファンファーレと共に、クイーンの『Bohemian Rhapsody』のカバーから開幕!

茶目っ気たっぷりに「還暦だから!」と赤いジャケットを颯爽と着こなす根本要(スターダスト☆レビュー/vo&g)のハイトーン・ボイスに始まり、躍動する大橋卓弥(スキマスイッチ/vo&g)のハリのある声、「僕にしか見えない天使かな…?」(大橋)なんて形容されるKANは、燕尾服に羽を背負ったスタイルと声で、曲にピュアネスさを加える。さらに、一声一声に歓声があがる秦 基博(vo&g)の柔和なボーカルへと続いていき、そのサウンドの土台をスタレビが強固に担う様は、まさに全員で“ひとつのバンド”そのものだ。

キリッとキメポーズ付きの秦がドデカいドラで締めるところも、前回同様だが(笑)、そのひとつひとつのインパクトは何と新鮮なことか! 続いて根本がホールを突き破りそうなほど伸びやかな歌声で『夢伝説』をお見舞いするや、一転『すべての悲しみにさよならするために』ではKANがしっとりと弾き語る。と、デベソステージのグランドピアノの上で、根本がマントをなびかせながら華麗なギターソロを披露(大型ファンとスモークでの煽りはKANの公演ではおなじみの光景) ! 大型ファンを相棒のように操り彼を輝かせる、大橋と常田真太郎(スキマスイッチ/p&cho)の玄人肌の仕事ぶり(!?)もぜひ頭の片隅に入れておいてほしいところだ。

「実に6年3ヵ月ぶりにこの4組が揃いました。曲によっては暇な人も出ちゃうんですが、ハケて楽屋に戻ったりしませんよ。演奏しなくても僕らはずっとステージにいます」(根本)。「(そういう時は)僕の行きつけのスナックがあります!」(大橋)と、ステージ上に突如フワリと灯りが灯るは『スナック451(ヨコイ)』の看板だ。

着物姿の美人ママがスタンバイするカウンターに、スキマスイッチ以外の顔ぶれが着席。となれば、お次は彼らの番と『ユリーカ』のメロディを奏でる。寺田正美(スターダスト☆レビュー/ds)の生命力溢れるドラミングにのせ、会場中の隅々までめいっぱい声を届ける大橋。その流れを爽やかに受け止めるのは秦 基博の『鱗(うろこ)』だ。KANが紡ぐピアノの音色とアコギを手にした秦のスモーキー・ボイスが豊かなアンサンブルを描いていく。加えて根本のブルージーなカラーが鮮烈に浮き出る『My Funky Valentine』を。歩んできた日々の分だけコクを増すような説得力ある声に、「生き様にブルースさがないと歌えないよ」(KAN)、「スキマにはブルース感がないんだよな」(大橋)と、ホスキモ全員が酔いしれる様は、何とも微笑ましい。

最年少の秦は、先輩たちの圧に負け(?)、ステージへと再び舞い戻る。「デビューして10年を超えましたが、ここでは信じられないペーペー感(笑)。一生追いつけないです」とはにかみながら「6年3ヵ月前、前回の『ホスキモ』の時にはなかった曲を」と、彼の新たな代表曲『ひまわりの約束』を弾き語りで。ポロンポロンと、アコギからこぼれ落ちる温かなメロディ、言葉ひとつひとつに息吹を与える力強さに、アーティストとしての揺るぎない芯を感じさせてくれる。

ここで、KANがホスキモ開催に至った経緯について口を開く。遡ること2010年、関西の音楽イベンター・GREENSの横井氏が旗手となり、このステージを企画。「デビューから僕を担当してくれていた人でしたが、前回からほんの3ヵ月後、横井さんは病気で亡くなってしまいました。それでもホスキモ再演の気持ちは全員にあったものの予定が合わず、やっと今日開催することができて。しかも横井さんの7回忌でもあり、昨日なんて命日なんだよね」(KAN)。「今日も来てくれているかもね」(根本)。不思議な巡り合わせで実現したこの奇蹟を知り、客席からも特大の拍手が沸くなか、今宵聴く『木蘭の涙』の美しさたるや。イントロに、弾けないピアノを大橋から迫られ、「うぇーん!」と泣いて去る秦と、困惑する根本の寸劇(笑)すら、横井氏への思いを内包するホスキモの照れ隠しのようだ。大橋と根本が交互にマイクを執れば、それはプラス以上の、何倍も何十倍もの大きなエモーションが広がっていく。その余韻を受け取った『アイ』では、続く豊かな幸福感に根本も「いい歌だねぇ」なんてニッコリ。

そして、デベソステージでは常田が奏でるピアノの上で、アコギを抱えた大橋がスタンバイ。そんなスキマスイッチの周りを全員で囲み、「キャンプファイヤー的な雰囲気で」(大橋)と促した『晴ときどき曇』で一層ハピネスは増す。ミニマムな楽器に持ち替えたスタレビの面々のサポートのもと、大橋は「みなさんも一緒に!」と温かなシンガロングを紡いでいく。林“VOH”紀勝(スターダスト☆レビュー/perc)の心の奥底から鼓舞する温かみあるリズムと、大橋の何にも染められない真っ直ぐな歌声の強さが、何とも印象的だ。

…と、ここでアノお方がいないことに、お気付きのお客様はどれだけいただろう。「今日は何とスペシャルなゲストが!」(根本)。前回のホスキモを知るオーディエンスはピンと来たかもしれない。そう6年3ヵ月前も会場にディープ・インパクトをもたらした“カンジェラ”のお出ましだ! 本家のアンジェラ・アキよろしく、“54”と大きく書かれたナンバーTシャツを召した彼女(偶然にも、KANの年齢と同じですね)。飄々と流暢な阿波弁を操り、ウェーブやらジャンプやらを織り交ぜつつじわじわ会場へと寄り添っていったかと思うと、『よければ一緒に』を弾き語る。歌詞がなければ、と言い切ってしまえる潔さ、「ラララ」で声を合わせる音楽の根源的な歓びは、カンジェラ…もとい音楽家・KANの真骨頂と言えるだろう。

さぁ、ここからは全員、これまでにも増してフルスロットル状態! 『と・つ・ぜ・ん Fall In Love』では、太いリズムでグル―ヴを生み出す柿沼清史(スターダスト☆レビュー/b)が美声を響かせ、常田、添田(スターダスト☆レビューサポート/key)、岡崎(スターダスト☆レビューサポート/key)のトリプル鍵盤の厚みも何とも贅沢ななか、曲間では秦のダンス指導も! ノリノリで大阪城ホールを牽引する彼だが「君が消えないように~♪」と、『と・つ・ぜ・ん~』にはない歌詞を、“突然”口ずさむ。「?」という表情をたたえる根本に、秦は「(このダンスは)次にやる僕の曲です!」との弁(笑)! 大橋のカミナリが飛び、再びイジけるというお決まりの流れにいきつつ、全員でオリンピック種目風のダンス・タイムに突入。年齢もキャリアも関係なく、ニコニコ踊る彼らのピースフルな姿と言ったら! そしてお次は先程フライングした『スミレ』へ。ここではKANと大橋が息ぴったりのアクションで、先ほどのスミレダンスをお見舞いする。

フーガのごとく壮大なアレンジに繋がる『愛は勝つ』も、一層の歓声を受け『全力少年』へとバトンを託す。花道を駆け、スタンド席の最前線ギリギリまで迫り歌う大橋。ついにはアリーナまで降り立ち、観客席との垣根を軽々ブチ破っていく様が何とも痛快だ。常田の鍵盤さばきにじわじわKANが近付き、連弾が生まれるシーンも底抜けにファンキー! 本編ラストを飾った『愛の歌』では、もはや演者と客席なんてボーダーはなく、ただただ全員で声を合わせる多幸感に「大阪スゴイ!!」と根本も感嘆しきりだ。

クリスマスに時間を巻き戻し(!?)、『KANのChristmas Song』で始まったアンコール。前回のステージでも全員で歌い繋いだこの曲、KANと常田、秦の3人によるハンドベルの音色も何とも美しい。「またいつかね、このメンバーでやれるようにがんばりたいね」(根本)。そう口にし、ラストはホスキモ唯一のオリジナル・ソングにしてテーマ曲…その名も『オリジナル』を! 集った1万人ひとりひとりに向けて歌いかけるような親密さ、一方で広大な空間を我がものにするダイナミズム。その共存が叶う凄まじさは、早々味わえるものではないだろう。無二の吸引力を持つボーカリストたち、その良さを最大限に引き出すスタレビをはじめとしたプレイヤー陣の演奏力にはただただ、脱帽だ。

あぁ、夢の時間も気付けば終幕。約3時間半に及んだ宴は、その長さを感じさせない実に濃密な時間だった一方、まだまだ観足りない気持ちすら! 次に出会えるのはいつだろう? その魔法がとけかけるころ、きっと彼らはまた現れる。大団円というにふさわしい、音楽と人々の思いが結実した至福の音空間をもたらしてくれた彼らに、拍手を!

Text by 後藤 愛
Photo by 田浦ボン、井上 嘉和
【セットリスト】
M1. Bohemian Rhapsody
M2. 夢伝説
M3. ガラナ
M4. キミ、メグル、ボク
M5. すべての悲しみにさよならするために
M6. ユリーカ
M7. 鱗(うろこ)
M8. My Funky Valentine
M9. ひまわりの約束
M10. ハナツ
M11. 桜ナイトフィーバー
M12. 木蘭の涙
M13. アイ
M14. 晴ときどき曇
M15. よければ一緒に
M16. と・つ・ぜ・んFall In Love
M17. スミレ
M18. 愛は勝つ
M19. 全力少年
M20. 愛の歌
EN1. KANのChristmas Song
EN2. オリジナル
【スターダスト☆レビュー】 http://www.s-d-r.jp
" 35thAnniversary Tour 「スタ☆レビ」 "
2017年3月25日(土)、26日(日)@オリックス劇場 チケット発売中!

" 35th Anniversary スタ☆レビ大宴会 ~6時間大コラボレーションライブ~大抽選会付き "
公演日時@:2017年5月20日(土)開場11:30 開演13:00 終演19:00(予定)
会場:さいたまスーパーアリーナ(埼玉県)
※さいたま☆物産展、さいたま☆おっさん展同時開催‼(11時〜19時)
チケット発売日:3月25日
お問合せ:SOGO TOKYO TEL:03-3405-9999 http://www.sogotokyo.com/

毎年夏恒例の野外ライブツアー「楽園音楽祭2016」から、2016年7月30日スタレビの聖地ともいえる香川県・さぬき市野外音楽広場テアトロンの記念すべき20回目の公演にスペシャルゲストChageを迎えた、全25曲、約3時間のライブを完全収録!!

「STARDUST REVUE 20回目のテアトロン with んなアホなホーンズ」
発売日:2017年1月25日(水)
[Blu-ray(1BD)] TEXI-75025 ¥7,000+税
[DVD(2DVD)] TEBI-64433~4 ¥6,000+税
【KAN】 https://www.kimurakan.com
過去の秀曲のいくつかが、KAN自身による丁寧な編曲で、弦楽四重奏とともにとっても上品に生まれ変わるセルフカバーアルバム。
リアレンジされた9曲に加え、弦楽四重奏のための書き下ろし曲、The Beatlesのカバー曲を含む全11曲収録。

New Album「la RINASCENTE (ラ・リナシェンテ)」
発売日:2017年3月15日(水)
価格:3,000円(税別)
製品番号:EPCE-7303
発売元:アップフロントワークス zetima
【スキマスイッチ】 http://www.office-augusta.com/sukimaswitch/
" TOUR 2017 “re:Action” " (対バン:KAN)
2017年5月23日(火)@オリックス劇場 4月8日(土) 午前10時よりチケット発売!

スキマスイッチの名曲が、音楽シーンを代表するアーティストの手によって、新たに生まれかわる!
2017年2月15日(水)ニューアルバム『re:Action』 リリース

New Album「re:Action」
◇初回生産限定盤[2DISCS:Blu-spec CD2]:AUCL-30040~1 ¥3,611+税 全24曲
◇通常盤[CD]:AUCL-218 ¥3,000+税 全13曲
【初回特典(初回生産限定盤)】
*スリーブケース+高品質CD:Blu-spec CD2
*リアレンジ楽曲のオリジナル音源(全11曲)を収録したボーナスCD付属!
特設サイト:http://www.office-augusta.com/sukimaswitch/reaction/
【秦 基博】http://www.office-augusta.com/hata/
" HATA MOTOHIRO 10th Anniversary LIVE AT YOKOHAMA STADIUM 2017 "
公演日:2017年5月4日(木・祝)みどりの日
時間:開場15:00 / 開演 17:00 / 終演 20:30予定 ※終演時間は変更になる場合があります
会場:横浜スタジアム
2017年4月01日(土) 10:00 よりチケット発売
お問い合わせ: SOGO TOKYO TEL:03-3405-9999 http://www.sogotokyo.com/

デビュー10周年記念!初のオールタイム・ベスト・アルバムが6月14日(水)にリリース決定!
さらに名曲「Girl」にドラマ・タイアップが決定!5月3日(水)にシングルとしてリリース!

New Single 「Girl」
<読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「恋がヘタでも生きてます」(4/6スタート)主題歌>
2017.05.03 OUT
◇初回盤 [CD+DVD] UMCA-59051 ¥2800 (tax in)
(特典DVDには「Augusta Camp 2016 ~produced by 秦 基博~」より第3部を完全収録!)
◇通常盤 [CD] UMCA-50051 ¥1,000 (tax in)

All Time Best Album 「タイトル未定」
2017.06.14 OUT
◇初回限定はじめまして盤 [CD1枚] UMCA-19051 ¥2,500 (税抜)
(※初回限定はじめまして盤は通常盤ならびにDVD/Blu-ray付初回限定盤とは収録曲が異なります。)
◇通常盤 [CD2枚組] UMCA-10051/2 ¥3,400 (税抜)
◇DVD付初回限定盤【CD2枚組+DVD2枚】UMCA-19052 ¥5,500 (税抜)
◇Blu-ray付初回限定盤【CD2枚+Blu-ray1枚】UMCA-19053 ¥6,500 (税抜)
(※ファンクラブ限定盤 後日詳細発表)

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