GREENS 30th Anniversary

LIVE REPORT

感謝感激あめあられ

2020.11.27 [fri] 大阪城ホール

"感謝感激あめあられ"と銘打たれた関西のコンサートプロモーター GREENSの30周年イベントが、11月27日・大阪城ホールにて開催された。夏に行われた、同じくGREENS主催の RUSH BALL 2020で初日ラストを盛り上げた[Alexandros]、THE ORAL CIGARETTES、大トリを飾ったCreepy Nutsという強力な3組が30周年を祝うべく集結。

コロナ感染者数の増加が続く状況の中、「大阪コロナ追跡システム」の登録、マスクの着用、検温、消毒、間隔を空けた客席、転換ごとの換気などガイドラインを遵守し開催された同イベント。お客さんが安心・安全に楽しめるように徹底的に対策がとられている。
そこには、生のライブで感動を届け、お客さんとともにライブエンタテインメントの未来を創造していきたいという主催者の想いがあった。


■THE ORAL CIGARETTES 5D3_7963_web.jpg MK4_7420_web.jpg トップバッターは、THE ORAL CIGARETTES。SEが鳴ると総立ちとなり拍手が鳴り響く。筆者自身もアリーナクラスの会場でライブを観るのは約10ヵ月ぶりだ。大きな会場ならではの音の反響と迫力をダイレクトに感じ、懐かしさと久しぶりの感覚に胸が熱くなった。

「ただみんなで手をたたくだけ!」と山中拓也(vo.g)がリードすると「GREENS30周年おめでとうーーーー!」とオープニングを飾る一言でライブがスタート。あきらかにあきら(Ba)と中西雅哉(d)のビートが腹に響く。
DSC05463_web.jpg 生の音が迫る感覚に魂が揺さぶられる。<夢で終わらせない>コロナ禍でのバンドの確かな意志と、疾走感のあるサビがオープニングに相応しい「Dream In Drive」演奏後、「(みんな)めっちゃあったかいやん!」と叫ぶ山中。心で歌えと言わずとも、彼らの音がそこにあるだけで伝わるものがある。拍手とジャンプでコール&レスポンスの練習をすると「お前らカンタンに飛ばしたろう!」と煽り、「カンタンナコト」へ。ジャンピングから後方まで続くヘドバンのシンクロは壮観だ。

MK4_7667_web.jpg ここで「テンション上がってきたんで、ゲスト呼んでもいい?」(山中)と思わぬサプライズが。新曲「Naked」でコラボするのは、本日の対バン相手であるCreepy Nuts・R-指定だ。ここでしか見られない2組による初のコラボに会場は熱狂。バキバキのビートの渦の中、R-指定の鋭いライムとバンドの熱量が壮絶に絡まり合う。「勝者も敗者もない今日は引き分け!」と颯爽と去るR-指定に大きな拍手が送られた。
5D3_7930_web.jpg MCでは、経緯について「コラボしない?と誘ったら心よく引き受けてくれました」と山中。Creepy Nutsのラジオリスナーでもある山中からラジオ愛が語られる場面もあり、対バンならではのレアなシーンにファンは歓喜。
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そして、アーバンなサウンドが心地良い「LIPS(Redone)」でクールダウンしつつ、後半戦は「ロックバンド見せつけます!よろしくどうぞ!」と妖艶なヴォーカルで感情のリミットをはずしにかかる「PSYCHOPATH」からのキラーチューン「狂乱 Hey Kids!!」へ。鉄板の流れが一体感をより濃くし、再びヘドバンの嵐に。
夏フェスの興奮が蘇る「BLACK MEMORY」では、エネルギーに満ちたステージングでクライマックスへと一気に駆け上がり、「ロックバンドは絶対諦めません!ライブハウスに一回来て。面白いと思わせるんで。少しずつやけど前に進んでる。大丈夫!一緒にゆっくり着実に進んでいきましょう」(山中)と力強い言葉で締めくくった。ラストソングは想いをこめた「Slowly but surely I go on」。彼ららしい最大限のパフォーマンスで、ロックバンドとしてのあり方を未来に示したステージとなった。




■Creepy Nuts 5D3_8224_web.jpg MK4_8670_web.jpg バンドセットが撤収され、ターンテーブルのみとなったステージ。2番手に登場したのは、先日2020年11月11日・12日に自身初の日本武道館ライブで約1万人を動員し、大成功を収めたCreepy Nutsだ。最強ロックバンド2組に挟まれたタイムテーブルは、ロック勢の中、堂々と大トリを務めた今夏のRUSH BALLを彷彿とさせる。<まずは今日の客、ノリは良いのか?>とご挨拶がわりに「板の上の魔物」をかませば、アウェイ感は皆無で、初見のロックファンを早々にトリコに。そして「今から楽しい"よふかし"できる奴手上げてくれ!」とヒットチューン「よふかしのうた」に続けてハートを掴むテク&スピード感はさすが。アウトロのDJ松永の超絶プレイに目が奪われる。

5D3_8119_web.jpg 大阪でのライブは、RUSH BALL以来という二人。MCでは、コロナ禍でいち早く野外ライブを復活させたRUSH BALLの成功を称えるトークも。「今日の主役は、そんなリスペクトするGREENSの元に集まったお客さんであり、俺らは助演男優賞」そんな完璧な運びで、「助演男優賞」「合法的トビ方ノススメ」へ。曲間で、「(声は出せなくても)身体は動かせるでしょ?」とジャンプを誘導!「先んじてTHE ORAL CIGARETTESのライブにお邪魔させていただきましたが...みんなもっと飛んでたんちゃう?」(R-指定)「そう言われてみれば!」(DJ松永)「さっき以上の飛び上がりを見せてくれなあきませんよ?」と面白トークを挟みながら盛り上げると当然、観客のジャンプは高さを増す。大阪城ホールのステージに初めて立つとは思えない安定のパフォーマンスでライブの醍醐味を見せつけた。

MK4_8921_web.jpg 自分たちの実体験を投影した歌詞が、自分事だけではなく、支えてくれる周りの人やリスナーの想いをのせている―そんな気づきについて語るR-指定。RUSH BALLでも披露された「サントラ」を時を経て歌うことでその気持ちを再確認。力強いサビの歌唱に磨きがかかり、確実に時間は流れ、未来は進んでいるということを感じさせてくれた。

そして、大阪の地元の仲間にささげる歌「月に遠吠え」を経て、新曲「Bad Orangez」で現在地を示す。「自分たちの可能性を信じて、肩で風きって生きていきましょう!」とラストは最新アルバムの表題曲「かつて天才だった俺たちへ」を。溢れる生命力と言葉の力でジャンルを飛び越え、それぞれの想いをのせて生々しいまでの輝きを放つステージ。ロック勢の心をがっちりつかんだライブとなった。
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■[Alexandros] 5D3_8340_web.jpg MK4_0469_web.jpg 転換、換気のあと、RUSH BALLの1日目でもトリを務めた[Alexandros]の登場を待つ会場は期待感に包まれていた。黒マスク姿の川上洋平(vo.g)を筆頭に白井眞輝(Gt)、磯部寛之(b&cho)、サポートメンバーのリアド偉武(d)とROSÉ(key)が登場すると割れんばかりの拍手。オープニング定番曲「Burger Queen」がSEから生演奏に切り替わり「Kick&Spin」へと流れるショーアップされた幕開けは痺れるカッコ良さ。

MK4_9665_web.jpg 続いてリリースされたばかりの新曲「Beast」も披露。ザクザクと空間を引き裂くような痛快なリフが脳天に響き、鼓動にリンクするようなタイトなリズムとスリリングな曲展開に翻弄される。ステージの端から端まで歩き、ディスタンスを感じさせずに心の距離感をつめていく川上。声を出せない状況ながらも「声出せ!」といつもとかわらないライブパフォーマンスに、オーディエンスは心の声で応える。本当に声が聞こえてくるような気がするから不思議だ。

DSC06665_web.jpg 「世界で一番人と人の距離が近いと言われているこの町(大阪)。一番苦しんでいると思います。でもルール守って盛り上げていただきありがとうございます!ライブできてうれしい!ありがとう!」(川上)と喜びと感謝を爆発させ、初期の名曲「You're So Sweet & I Love You」のイントロへ。レアなセトリに本来ならば大合唱状態となるはずだがここはグっと我慢。手を挙げ、喜びを表現するファンから感動が伝わる。しかし「まだまだ心で声出したいか!全然聞こえないぞ!心の中だからってさぼってんじゃねーぞ!」と手加減なしに「Dracula La」へ。「オーオーオー」のコール&レスポンスは通常運転。心のシンガロングは輪を広げさらなる一体感を生みだしていく。

MK4_9794_web.jpg ツインギターが共鳴し、川上のハイトーンが冴えわたる「Run Away」で壮大なグルーヴが会場を包むと、浮遊感のあるROSÉのキーボードのフレーズが高揚感を高め、会場をクラブ空間へ。このアレンジ、踊らずにはいられない。そして川上のギターストロークを合図に「Starrrrrrr」へなだれ込み、ハンドクラップの嵐に。すべてが放出されるかのような圧倒的なサウンドスケープに飲み込まれていく。

GREENS30周年と同時に、今年デビュー10周年を迎えた[Alexandros]。「今年は大変な年だったけどその分来年が楽しみ。1月にはベストアルバムが出ます!」(川上)そのベストアルバムに収録される新曲「風になって」が大阪でライブ初披露となった。春の訪れを思わせるような爽快なナンバーからラストチューンは「ワタリドリ」でフィナーレ。まるでワンマンのような充実のセットで、変わらぬバンドの包容力と10年の進化を見せつけた。
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魂を震わせるリアルなライブの素晴らしさを改めて感じた3時間。また今まで通りのライブができるその日まで、「とにかく元気で生きていること」Creepy Nuts・R-指定がMCで語った言葉に頷く。30周年のその先もこの素晴らしい空間を共有できますように。心の声がめいっぱい響いたアリーナでそう願った。


【set list】
THE ORAL CIGARETTES
M1.Dream In Drive
M2.5150
M3.カンタンナコト
M4.Naked with R-指定(Creepy Nuts)
M5.LIPS (Redone)
M6.PSYCHOPATH
M7.狂乱 Hey Kids!!
M8.BLACK MEMORY
M9.Slowly but surely I go on

Creepy Nuts
M1.板の上の魔物
M2.よふかしのうた
M3.助演男優賞
M4.合法的トビ方ノススメ
M5.阿婆擦れ
M6.サントラ
M7.月に遠吠え
M8.Bad Orangez
M9.かつて天才だった俺たちへ

[Alexandros]
M1.Kick&Spin
M2.Beast
M3.You're So Sweet & I Love You
M4.Dracula La
M5.Run Away
M6.Starrrrrrr
M7.風になって
M8.ワタリドリ


Text by岡田あさみ
Photo by渡邉一生