GREENS 30th Anniversary

LIVE REPORT

スキマとYAMA-KANのスイッチオン

2020.11.28[sat]大阪城ホール

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2020年、30周年の節目を迎えた関西のコンサートプロモーター・GREENS。その歴史の中で数多のステージを重ねてきた豪華アーティストを迎えたアニバーサリー・イベントが、大阪城ホールにて開催された。その2日目となったのが、11月28日に行われた『スキマとYAMA-KANのスイッチオン』で、当日はKANと山崎まさよしによるユニット・YAMA-KANとスキマスイッチが集結! 未曾有のコロナ禍である今、さまざまなルールを敷いての開催となったが、それでも音楽は鳴らせる、アーティストとオーディエンスはつながっていられる...そんな希望に満ちた、笑いあり涙ありのひとときをレポートする。

P-033_resized.JPG 万全の感染症対策を施した会場へ、まずは大橋卓弥(スキマスイッチ/vo&g)が登場。ステージ中央に鎮座する大きなスイッチをオンにすれば、これが開幕の合図に。まずはヴァン・ヘイレン『Jump』をカバー...と思いきや、山崎まさよしが歌い出したのは何と『セロリ』! しかもドラムを叩きながらの歌唱で、交互に歌いつなぐ大橋はキーボードを担当。
P-042_resized.JPG サビでは「Jump!」と合いの手を入れながらKANの爪弾くエレキギターが唸りを上げ、常田真太郎(スキマスイッチ/p&cho)はベースで躍動感をプラスしながら、早口パートを見事に歌い切る! 全員が普段とは異なるパートを担当した遊び心満載のオープニングを経て、タイトルコールを叫ぶ4人。

P-048_resized.JPG 「こんばんは! よくぞ、よくぞ集まっていただきました。まさか、城ホールでライブができるなんて。本当にありがとうございます!」(大橋)
「今回はスキマスイッチと、僕と山崎くんによるYAMA-KANでのステージ。しかもこの人数でやるんだから、スゴイですよ」(KAN)

そう促し、スキマスイッチとYAMA-KANの4人に加え、10名のバンドメンバーを紹介しながら、自らのユニットの"濃い"歴史を紹介していくKAN。
P-047_resized.JPG 「YAMA-KAN は2018年3月にデビューし、翌月解散。そして翌年8月に再結成して2週間後に涙の解散コンサート...。今年の頭に2度目の再結成をして即解散、そして今日が3度目の奇跡の再結成ですね。もう二度と観れないと思います」(KAN)
「...多分コレ観れるな(笑)」(常田)
「今日はGREENSの30周年記念イベントで。さっき聞いたんだけど、GREENSという会社名は、創業当時は若いイベンターだったから、まだ青臭いけど頑張りましょう、という意味でつけたんだって。だけど今や30周年じゃん? もうグリーンじゃないんだよね」(KAN)
「ブラウンですね」(山崎)

そんな飄々としたKAN節を炸裂させながら、続いてはYAMA-KAN の全3曲のレパートリーより『手をつなぎたいんだ』を披露。山崎のブルースハープが鮮やかに響き、お次はスキマスイッチへとバトンタッチ。「今日は皆さん、声は出せないと思うので手拍子を。心の中で歌ってください」(大橋)と、『Ah Yeah!!』『スフィアの羽根』と、軽快なアンサンブルを奏でる彼ら。大橋はこの上なくソウルフルな歌声を聞かせながら、めいっぱいジャンプ! 客席も静かに、でもエネルギッシュに拳を挙げ呼応していく。
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続くYAMA-KANの『記憶にございません』では、KANが海援隊の『贈る言葉』を歌い始め全員をズッコけさせるや、山崎も負けじと『贈る言葉』(見事な武田鉄矢感あり)を重ねるWボケも! かと思えば一転、豊潤なボーカルワークできっちり聞かせていくのだから、何とも心憎い。
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ここで一旦バンドメンバーは退場。「真ん中にグランドピアノがあるので、皆で囲んでみませんか?」(大橋)と『Lounge SHINTAWAY』のコーナーへ。オーナーピアニスト・常田の伴奏で好きな曲を歌えるというコンセプトのラウンジで、口火を切ったのは山崎だ。

c6d2cae00002f4bfef3f558818e46b9998048cf5.JPG 「俺、一番目いいですか?」(山崎)
「珍しく積極的な」(KAN)
「積極的にせざるを得ないんですよ! あなたの企画は」(山崎)
「(KANから)声がかかった時点で、ただライブやるだけとは思ってないですもんね(笑)」(大橋)

P-149_resized.JPG そう、どこに仕掛けがあるのか...観ている側も常にスリルを秘めながら(笑)、まずは山崎がイーグルスの『デスペラード』をムーディにカバー。常田の清らかなピアノの調べに乗せ、続く大橋は敬愛するMr.Childrenの『しるし』で、自身の曲以上に入り込んでいくシーンも。
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常田が「今までで一番、声が出てた!」と驚くほどの熱唱ぶりで、「これマジなコーナーなの!? じゃあ俺も本気でいくよ」(KAN)と、エルトン・ジョン『ユア・ソング』をオーダー。と思いきや、山崎や大橋にゴリ押しされ、渋々ギルバート・オサリバン『アローン・アゲイン』を歌うはめになるも、その伴奏に『ユア・ソング』のメロディーと歌詞をしれっと乗っけるのだから、さすがと言うほかない。

「序盤なのにフザけ過ぎ!」(大橋)との訴えで、ようやく山崎の『Eyes On You』で軌道修正を。多幸感たっぷりに歌い上げ、そのままYAMA-KANのオリジナル3曲中3曲目のレパートリー『Take me Follow me』へと向かうが...。パンデイロを鳴らし、ループマシンを操る山崎に「テンポが早い!この時点(YAMA-KANとしては最後の曲)で俺たちはもうほぼ解散なんだから。落ち着いていこうね」とKANがたしなめるも、いつの間にかループマシンの逆回転機能で遊ぶ流れに。逆再生を楽しみつつ場を沸かせる4人の様子は、まるで少年のようだ。
P-112_resized.JPG この日は換気のため、休憩を挟んだ構成で(とは言え、大阪城ホールは空気の循環が万全だそう)、前半のラストとなるのはスキマスイッチ『虹のレシピ』だ。同曲のレコーディングには、今宵のバンドメンバー・佐橋佳幸(g)、石成正人(g)、松本智也(perc)も参加していたとあって、「なかなかオリジナルメンバーでやる機会もないですよね」(大橋)と顔をほころばせながら、ハピネスな歌世界を描いていく。

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「ハミングならいいでしょ? 絶対、飛沫は飛んでないよ!」(大橋)と新時代のコール&レスポンスも飛び出し、佐橋から石成へと連なっていく極上のギターソロも、この上なく贅沢に響く。ここで常田がステージ上のスイッチをオフにし、前半はフィニッシュ!

休憩を経て、「前半のオープニングはハードロックだったから、後半はフォークをやりたいなと」(KAN)と、思い思いに70年代フォークを体現した衣装で再び現れた4人。チューリップハット+オーバーオールの山崎が再度スイッチを入れ、後半戦へ突入! 楽屋で違和感がないと評判だったという常田は、懐かしのアフロ姿だ。
P-019_resized.JPG 「(アフロヘアだった2008年までの)当時は地毛でしたけどね。こういうことやると、昔もカツラだったんだって言われたり...別にいいですけど」(常田)
「卓弥はコンセプト何や!? 70年代にそんなヤツ歩いてたか?」(山崎)
P-021_resized.JPG エッセンスを混ぜ過ぎて失敗したという特大サングラス姿の大橋からは、「でも、フォークってこういうものじゃないですか」との名言(?)まで飛び出す。そんな時代のカラーを歌でも示そうとするのは、ヒッピーと化したKANだ。「では、1970年代の大ヒット曲(本当は1992年!)...『まゆみ』を」と、自身の名曲へといざなう。歌詞がわからないという3人のために、「俺が先に歌うから、追いかけてきて」と先行して歌うKANだが、そのバタバタ感に思わず山崎も「せわしない!」と叫び、結局3人はコーラスに専念。
P-175_resized.JPG こんなにフザけ倒しているのに楽曲は輝くばかりで、続くはスキマスイッチのふたりだけで臨む『ハナツ』を。「ここからは各々のソロコーナーという感じで」と導く大橋の朗々とした歌声は、広大な大阪城ホールをまるごと包んでいくようだ。
さらに、山崎がアコギ1本で奏でるのは『One more time, One more chance』。何度耳にしても色褪せないこの曲は、凄まじい吸引力で聴く者の心の奥底まで揺さぶっていく。そしてソロコーナーの最後を飾るのはKAN。真っ赤なサンバ衣装にたっぷりの羽を背負った超主役級の衣装とは裏腹に、歌うは新曲『エキストラ』だ。しっとり美しい旋律に乗せ、静かなドラマを奏でる耳への幸福と、視覚からくるインパクトの共存...これぞKANワールド!
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続いて、「こういう共演の機会がないとできない曲なので、今回は絶対やりたくて」と、大橋が力強い言葉で示した『回奏パズル』を。2017年にリリースしたスキマスイッチのリアレンジ・リプロデュースアルバム『re:Action』のラストを飾るこの曲は、KANがスキマスイッチの過去作27曲をつなぎ合わせ、再構築した大作。「スキマスイッチを知らない人にも、いい曲だと思えるものにしたかったんです」(KAN)という思いが色濃く投影されたサウンド、そして詞世界のカケラたちは、スキマスイッチのサウンドメイクの力と同時に、それらのピースを組み合わせ完成させた音楽家・KANの偉大さを改めて知る時間に。ここで「KANさん、『Take me Follow me』やってません!」と、山崎が衝撃の事実に触れる。「本当だ! 涙の解散コンサート(4回目)、山崎くん本当にありがとう!」(KAN)とバンドメンバー勢揃いで、躍動感たっぷりにYAMA-KANのレパートリーを無事完走!
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「さぁ、もう終盤。このコンサートはアンコールなしで、きっちりやり切りますよ。新しいコンサート様式!」(KAN)とリリカルに『愛は勝つ』を奏で、続く山崎は新曲『Updraft』で、分厚いバンドアンサンブルを放出。そして、大橋がクラップで交わすコール&レスポンスがまた凄まじく、客席からのリアクションの大きさには全員が圧倒されていた。
P-026_resized.JPG 「皆さんもこのパワーを身体に溜めて、持ち帰って。そしてまた、イエー!って叫べるようになったとき、僕に返してください!」(大橋)と、フィナーレの『全力少年』では大橋とKANがそれぞれ上手と下手に分かれ、隅々まで声を届けようとステージ中を駆ける。「楽しんでもらえましたかね? 僕らは本当に楽しませてもらいました!」との大橋の言葉は、ライブの醍醐味そのものだ。最後はKANがスイッチをオフにし、終幕へ。希代のショーマン・KANを筆頭に、歌心あふれる山崎まさよし、スキマスイッチによる祝宴は、これにて大団円を迎えた。
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Text by 後藤愛
Photo by 田浦ボン


[NEXT LIVE INFO]
▶︎KAN 弾き語りばったり #30 First Class Distance
1月30日(土) 神戸文化ホール 中ホール SOLDOUT!!
2月14日(日) Zepp Osaka Bayside 1月8日(金)10:00発売
3月12日(金)Zepp Namba 1月8日(金)10:00発売
3月27日(土)なんばHatch 1月8日(金)10:00発売
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▶︎スキマスイッチ TOUR2020-2021 "Smoothie" 2days SOLDOUT!!
2021年1月19日(火)20日(水)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:オリックス劇場
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▶︎山崎まさよし Live Online "ONE KNIGHT STAND 2020″』バースデー配信ライブ
12月23日(水)20:00〜
チケット:12/5(土)10:00~2020/12/26(土)17:59
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おまけのスイッチオン!
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